57年前の10年間はHONDA S800漬けの毎日、当時すでに錆でボロボロだったこの車。 研究所に就職する前は、HONDA sports 800の一般修理とフルレストアを生業にしていました。自分で組んだエンジンは延100台以上。
S800の仕事に従事して丁度10年たったころ、HONDAがレース復帰して、NR500を駆り 片山敬済選手がヨーロッパ選手権に出場していた。一念発起で鈴鹿製作所に期間工として入社。契約期間3ヶ月経過後に正社員に登用。そして、社内チーム爽風会鈴鹿レーシング・クラブに籍を置き、8時間耐久用のエンジンを担当した。その頃、新たにNS500の開発すると言うことで、HONDA R&D から、F1チーム(WAKO)、MX全日本(朝霞)、最後にNRグループ(朝霞)からヘッドハンティングが次々と来たので、直属課長も断り切れなくなって、面接許可。翌週にはキャブ開発スタッフとして転勤。(この時に、S8のエンジンとキャブ知識が役に立ちました。m(__)m)
余談ですが、スペンサーがダブルタイトル獲得までのキャブは、私が開発しました。そして、その後のNSR500へと引き継がれる。
その後、10年務めたHONDA R&D退職して、今の会社(NAGsed)を立ち上げました。その後更に10年はレースに専念しておりましたが、「あ!やっと見つけた!!」と、当時レストアした車両が現れて、「見てくれるだけで良いから」と、来社。レストアから、すでに50年以上経っているのに、機関以外はピッカピカ。遠くから見るだけの約束でしたが、亜鉛ダイキャストのCVキャブは歪んで、ピストンは固着状態。結局見るに見かねて、キャブの修理を行う羽目に。その後は、ウワサが広がった事も有り、私が手がけた数台が来社。
一見、調子良さそうにに見えますが、人間が加齢を重ねる如く、本来出来ていることが出来てい無くなっていることが次々と発覚。
オーナーさんも、それに気づかない。エンジン掛かるし、走るし、問題ないよ~。 と・・
で・・・6月某日に、私の教育係だった先輩が、いよいよ仕事納めすることになり、数人のオーナーさんで慰労会をすることになり、加賀山中温泉へ。

出発前に、先ずはエンジン掛けて貰って、簡単にキャブ調整を済ませ、イザ!出発と相成りました。(前置きがながいよ・・m(__)m)
私は助手席でしたが、快調にせせらぎ街道を経由して、御母衣ダムを目指します。それから、昔・・先輩のN600で走ったころは未舗装だった、白山スーパー林道へ。 此処の有料道路ゲートで運転を代わりまして、最初は遠慮がちに・・あれ?、最初の違和感が・・・登りなのでアクセルペダルの踏み込み量は大きいのは解りますが、???もしかして、現行の軽自動車並?m(_ _)m。ペダル踏んでいるよりも、戻した方が力があります。レース用バイクで言う(オーバーボア)ですか~。 翌日帰路は、九頭竜ダム駅からS600の方を運転させて頂きます。
あら~!、こちらも同じ。道端で車を止め、一見綺麗なエアークリーナエレメントを外して、再出発。走り出してすぐに変化に気づきました。(笑)
そうなんです、エレメントのメッシュが詰まっていて、スロットルバルブの開き開度よりも、バキュームピストンの方が速く開いてしまい、上手く燃料を吸えていなかったんですね。エレメントを外したことで、ここからはS800よりもパワフルになり、ガンガン走ります。 もう一台のS800は、元々エレメントが付いていなかったので、会社に着いてから、バキュームピストンのスプリングチェック!。4本とも、長さが違う・・・。(エレメントが詰まると、早いタイミングでピストンが跳ね上がってしまうので、これに対応する為に??・・スプリングを引っ張って延ばし、動きを遅くすることがありました・・ね~・・。

紙のフィルターが欠品していた(生産中止)事も有り、我が社でスポンジフィルター用に開発して製造したスプリングがストックしてあるので、速攻で交換して試乗。2mも走らないうちに改善されたのが解ったので、そのままユーターンしてオーナーとバトンタッチ。(やはり前置きが長いわ。m(__)m
と言うことで改めて、ストックのキャブレターをお預かりしてのオーバーホールになりました。

バルブ全閉度確認用のジグ作りから・・。

ゴムシートの下に仕込んだLEDライトを当てて、透かしてみると・・ちゃんとしまっていないことが解ります。このしまり具合で、アイドル調整の善し悪しが決まるので、根気強く調整します。ミッションやデフの駆動系が唸るのも、この影響が大きいですよ~。ちゃんとしていれば、低速一定速でシャクッたり、唸り音の軽減にもなります。

この個体、出所はイギリスとお聞きしましたが、作業工賃が増えるので、「洗って、外見だけでも綺麗に」して出して貰うと手間省けます。で、分解して見ると欠品部品やJet類の大きさが入れ替わっていたり、番手が違っていたりで、調べ直しました。

そして、発売当初からの問題である、ブローバイ通路詰まり。いくら旧車といえども大気開放は避けたいので、この対策も手抜きできません。では、今までどうしていたかというと、50年以上前から皆さん大気開放に。実際にホースを繋ぐと、アイドル回転数が落ちます。時代は進み、今はエマルション対策も可能なので、ブローバイ通路の改修も行いました。

こちら、S800の個体。パイプ径の大きさは、クリアしていますが、サンドイッチした面は平面なので、奥行き深さが足りずに、合わせ面の処で断面積が半減して小さくなり、通路面積が狭くなっています。

真ん中が加工済みのS600のブローバイチャンバー。当時としては先進的な処理方法で、キャブ入り口までガス誘導して、各気筒に分配。と、此処までは合格点??。でも、この場所には負圧は発生せず、低回転時には(全開以外は)、吹き返しをもろに受けるので、ガスを吸い出すどころか、押し返してしまいますので、S800になってからは、この方法は採用されていません。

こちらは、S600のキャブレター。未使用で綺麗だったので、チャンバー組んで終わり、楽勝と?・・。
此処にも、未使用ならではのトラップが。 右から順に、歪みの影響でピストンのクリアランスが無くなり、自重で沈まなくなっています。(右2つは正常。
ここまで書いていると・・・・パソコンが、「長くなっていますよ~、休憩しなさい」の珈琲マークが出るので、Intermezzo m(__)m。
休憩後は気を取り直して・・・一気にフィニッシュ。

めでたくNAGバルブも装着できました。インテークも何種類か有るので、同調チェックネジが無かったので、1箇所だけネジ穴を作りました。

結果は・・、思わずピース!!(頼んで、して貰いました。(笑
ご本人の了解も得られてので、後日FBに書き込みのあったインプレッションを、紹介して置きましょう。
「その節はお世話に成りました。以下当日の私のフエイスブックレポートです 昨日はお休みして キャブ仙人様の所に自走で行ってきました。S8のキャブが仕上がったとのことで キャブ仙人様指導のもと 取り付け前の状態を試乗していただいて 自分がキャブ交換 さて楽しみです。なんと期待以上の違いに感動ですが まだまだ これからまだナグバルブの取り付けです。これは キャブ仙人様の出番です。その後 テスト走行してなんと格段にスムーズに成り クラッチミートがしやすくなりました。感動しました。嬉しく成って帰りは。下道(ゲドウと読むそうです仙人様から)158号を五箇山まで爆走して帰って来ました。流石に疲れた。」
どれだけ楽しい車に生まれ変わったのは、文面から推察してみて下さい。 我と思わん方は、手を挙げて下さい。私が元気なうちがチャンスです。

